サイトのトップ動画を、撮影せずにAIだけで作った話(MiniMax H3で9本生成して1本を採用するまで)
この記事の内容
このページの上部、いま画面の上のほうで流れている15秒の動画は、撮影していません。スタジオも借りていませんし、撮影スタッフも呼んでいません。AIで生成したものです。
ただ「AIで一発で作れました」という話ではありません。トップ動画のために9本生成して、採用したのは最後の1本だけです。何を使い、どこで失敗し、どう直したのかを、実際のプロンプトと没になったフレームごと公開します。
使ったツールと、かかった費用
| 工程 | 使ったもの | やったこと |
|---|---|---|
| 参照画像づくり | gpt-image-1(images.edit) | 本人の実写写真を元に、ブランド用のポートレートを生成 |
| 動画生成 | MiniMax H3(Hailuo 3.0)公式API | 参照画像+秒割りプロンプトから15秒の動画を生成 |
| 生成の実行 | Python(自作CLI)/Claude Code | APIを叩いてポーリングし、完成したらダウンロード |
| 検品 | ffmpeg | 1秒ごとにフレームを書き出して、文字と顔を目視で確認 |
| 公開 | Cloudflare Pages | サイトに組み込み、回線・設定に応じて出し分け |
MiniMax H3のAPI単価は、768Pが1秒あたり0.08ドル、2Kが1秒あたり0.13ドルです(2026年8月時点)。つまり2K・15秒で1本あたり約2ドル。9本作っても20ドル弱で収まっています。
実写で会社紹介動画を制作すると、3〜5分のインタビュー形式で30万〜80万円が相場です(会社紹介・PR動画の費用相場)。もちろん用途も仕上がりの性質も違いますが、「トップに置く15秒の映像」という目的に限れば、選択肢として現実的な価格帯になったということです。
なぜMiniMax H3を選んだか
動画生成AIは用途で向き不向きがはっきり分かれます。2026年時点での大まかな使い分けはこうです。
| ツール | 得意なこと | 向いている用途 |
|---|---|---|
| MiniMax H3(Hailuo) | 参照画像で人物・動物の見た目を固定しやすい。2K・最大15秒・音声も同時に出る | 特定の人物が繰り返し登場するブランド映像 |
| Sora 2 | 物語性、シーンのつながり | ストーリー仕立ての短編 |
| Google Veo 3.1 | 映像美、Google環境との連携 | ビジュアル重視のカット |
| Kling | 人物の動き、アクション、コストパフォーマンス | ダンス・スポーツなど動きの多い映像 |
今回の要件は「代表本人と愛犬が、15秒のあいだ同じ姿のまま出続けること」でした。登場人物の同一性を保てるかが最優先だったので、参照画像を複数枚渡せて2Kで15秒まで一度に出せるMiniMax H3を選んでいます。用途が違えば選ぶツールも変わります。
最初の失敗:社名の綴りが崩れた
2本目に作ったバージョンは、3Dタイポグラフィで社名を大きく出す構成でした。結果がこれです。
「YANAGIMATSU」と指定したはずが、「YANAGII」「IMATSU」と、余分なIが入った2行になっています。さらに背景の装飾に入れた数字も「345,9.3」「0028 1136 - 906S」のような、読めそうで読めない文字列になりました。加えて、フォトリアルを指定したのに全体がイラスト調に寄っています。
これは珍しい失敗ではありません。画像・動画の生成AIは、文字を「文字」ではなく「そういう形の模様」として描くので、長い単語ほど崩れます。日本語ならなおさらです。
学び:文字は「量」ではなく「置き方」の問題
この失敗のあと、方針を次のように変えました。
AI動画に文字を入れるときのルール
- 文字を出す箇所は動画中1箇所だけにする(今回はラストのロゴのみ)
- それ以外は「文字を一切出すな」と明示する:画面に映るモニターやUIも含めて禁止する
- 綴りを1文字ずつ指定する:「spelled exactly Y-A-N-A-G-I-M-A-T-S-U」のように書く
- 人物と文字を重ねない:「上に配置し、重ならないこと」まで指定する
- 重要な文字はAIに描かせず、後から合成するのが最も確実
実際、条件を絞ったうえでテストしたところ、日本語のコピーも正しく描けました。「相棒と、いつも一緒に。」という1行を、最後の2秒だけ、人物と重ならない位置に出す指定にしたところ、崩れずに出ています。
つまり「AIは文字が苦手だから使わない」ではなく、1箇所・短く・重ねない、という条件なら通るというのが実務的な結論です。ただし通ったかどうかは毎回目視で確認する必要があります(後述)。
プロンプトの構造:この5ブロックで書く
15秒の映像を狙って作るには、雰囲気を書いても足りません。実際に使っているプロンプトの骨組みをそのまま公開します。
効くのは2番と5番です。とくに「Avoid」に書いた項目は、書かないと高確率で起こります。逆に言えば、1回失敗するたびにAvoidへ1行足していけば、生成の精度は上がっていきます。
没にした案もふくめ、書いたプロンプトは全文を制作ログのページに置いてあります。各版の生成結果のフレームと、なぜ没にしたのかもそこにまとめました。
実際の秒割り(採用版の冒頭部分)
ポイントは、各ブロックに「何が起きるか」「カメラがどう動くか」「光がどうなっているか」の3つを必ず書くことです。どれかが抜けると、その部分はAIが勝手に決めます。
納品前の検品:必ずフレームに割って見る
動画を再生して確認するだけでは、一瞬だけ崩れているフレームを見逃します。弊社は生成のたびに、必ず全フレームを静止画に書き出して目視しています。コマンドはこれだけです。
フレームを見るときのチェック項目
- 文字の綴りが正しいか(1文字ずつ読む。特に I・L・M の連続)
- 人物の顔が途中で別人になっていないか
- 手や指の本数、犬の脚の数に破綻がないか
- 実在ブランドのロゴや、意図しない透かしが写り込んでいないか
- 画面内のモニターに、読めそうで読めない文字が出ていないか
Webに載せるときの実装
作った動画をサイトのトップに置くとき、そのまま貼ると通信量と離脱の問題が出ます。このサイトでは次のようにしています。
- 自動再生・ループ・ミュート・インライン再生で置く(
autoplay muted loop playsinline) - ポスター画像を必ず指定する:読み込み前に真っ黒な四角が出るのを防ぐ
- 省データ設定・低速回線では動画自体を読み込まない:
navigator.connection.saveDataとeffectiveTypeを見て、該当する場合はsourceごと削除する - 「動きを減らす」設定の人にも配信しない:
prefers-reduced-motion: reduceを尊重する - 音声トラックがある場合はミュート解除ボタンを置く:勝手に音を鳴らさず、視聴者が選べるようにする
- 自動再生が始まらない場合に備える:iOSの低電力モードなどで
play()が失敗することがあるため、失敗を検知して手動の再生ボタンを表示する
特に3番目と4番目は忘れられがちです。トップに10MB以上の動画を無条件で配ると、モバイルの通信環境によっては表示が始まる前に離脱されます。
結局、何にどれくらいかかったか
| 項目 | 実績 |
|---|---|
| 生成した本数 | トップ動画向けに9本(うち採用1本) |
| 生成の費用 | 2K・15秒で1本あたり約2ドル、合計20ドル弱 |
| かかった日数 | 2日(プロンプトの書き直しと検品を含む) |
| 撮影費・スタジオ費 | 0円 |
| 最終的な動画 | 2560×1440/24fps/15秒/音声あり |
正直に書くと、9本のうち5本は「思っていたのと違う」で捨てています。AI動画制作のコストは生成費用よりも、方向性を決めて、確認して、書き直す時間のほうが大きいというのが実感です。
よくある質問
本人の顔をAIに使わせて大丈夫なんですか?
自社の代表本人であり、本人の合意のうえで使っています。他人の顔や、権利者の許諾を得ていない写真を参照画像にするのは避けてください。社員の方に登場してもらう場合も、利用範囲と期間を決めて書面で合意を取ることをおすすめします。
商用利用はできますか?
ツールごとに利用規約とライセンス条件が異なり、プランによっても変わります。必ず使用するツールの最新の規約を確認してください。「生成できること」と「商用で使えること」は別の話です。
実写の撮影はもう不要になりますか?
ならないと考えています。実在する自社の設備、実際の商品、本物の社員が話す内容は、生成では代替できません。今回のように「雰囲気を伝える15秒」ならAIが向いていますし、採用動画や事例紹介のように事実を伝える映像は撮影が必要です。用途で分けるのが現実的です。
日本語のテロップは入れられますか?
短い1行を、1箇所だけ、人物と重ならない位置に出す指定なら通ることを確認しています。ただし毎回成功する保証はないので、確実性が必要な場合は動画編集ソフトで後から乗せてください。そのほうが早く、修正も効きます。
音声はどうしていますか?
MiniMax H3は映像と一緒に音声も出力できるため、今回はそのまま使っています。ただしサイト上では初期状態をミュートにし、ミュート解除ボタンで視聴者が選べるようにしています。
「うちでも作れますか?」というご相談を歓迎します。AIで作るべきものと、撮影したほうがいいものの切り分けからお話しします。
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