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サイトのトップ動画を、撮影せずにAIだけで作った話(MiniMax H3で9本生成して1本を採用するまで)

2026年8月21日公開 | 栁松聖吾

サイトのトップ動画を、撮影せずにAIだけで作った話(MiniMax H3で9本生成して1本を採用するまで)

この記事の内容
  1. 使ったツールと、かかった費用
  2. なぜMiniMax H3を選んだか
  3. 最初の失敗:社名の綴りが崩れた
  4. 学び:文字は「量」ではなく「置き方」の問題
  5. プロンプトの構造:この5ブロックで書く
  6. 実際の秒割り(採用版の冒頭部分)
  7. 納品前の検品:必ずフレームに割って見る
  8. Webに載せるときの実装
  9. 結局、何にどれくらいかかったか
  10. よくある質問

このページの上部、いま画面の上のほうで流れている15秒の動画は、撮影していません。スタジオも借りていませんし、撮影スタッフも呼んでいません。AIで生成したものです。

ただ「AIで一発で作れました」という話ではありません。トップ動画のために9本生成して、採用したのは最後の1本だけです。何を使い、どこで失敗し、どう直したのかを、実際のプロンプトと没になったフレームごと公開します。

使ったツールと、かかった費用

工程使ったものやったこと
参照画像づくりgpt-image-1(images.edit)本人の実写写真を元に、ブランド用のポートレートを生成
動画生成MiniMax H3(Hailuo 3.0)公式API参照画像+秒割りプロンプトから15秒の動画を生成
生成の実行Python(自作CLI)/Claude CodeAPIを叩いてポーリングし、完成したらダウンロード
検品ffmpeg1秒ごとにフレームを書き出して、文字と顔を目視で確認
公開Cloudflare Pagesサイトに組み込み、回線・設定に応じて出し分け

MiniMax H3のAPI単価は、768Pが1秒あたり0.08ドル、2Kが1秒あたり0.13ドルです(2026年8月時点)。つまり2K・15秒で1本あたり約2ドル。9本作っても20ドル弱で収まっています。

実写で会社紹介動画を制作すると、3〜5分のインタビュー形式で30万〜80万円が相場です(会社紹介・PR動画の費用相場)。もちろん用途も仕上がりの性質も違いますが、「トップに置く15秒の映像」という目的に限れば、選択肢として現実的な価格帯になったということです。

なぜMiniMax H3を選んだか

動画生成AIは用途で向き不向きがはっきり分かれます。2026年時点での大まかな使い分けはこうです。

ツール得意なこと向いている用途
MiniMax H3(Hailuo)参照画像で人物・動物の見た目を固定しやすい。2K・最大15秒・音声も同時に出る特定の人物が繰り返し登場するブランド映像
Sora 2物語性、シーンのつながりストーリー仕立ての短編
Google Veo 3.1映像美、Google環境との連携ビジュアル重視のカット
Kling人物の動き、アクション、コストパフォーマンスダンス・スポーツなど動きの多い映像

今回の要件は「代表本人と愛犬が、15秒のあいだ同じ姿のまま出続けること」でした。登場人物の同一性を保てるかが最優先だったので、参照画像を複数枚渡せて2Kで15秒まで一度に出せるMiniMax H3を選んでいます。用途が違えば選ぶツールも変わります。

最初の失敗:社名の綴りが崩れた

2本目に作ったバージョンは、3Dタイポグラフィで社名を大きく出す構成でした。結果がこれです。

AI生成動画で社名の綴りが崩れた没バージョンと、採用したバージョンの比較
左:社名が「YANAGII/IMATSU」と綴りを崩した没バージョン。右:採用した現行版。

「YANAGIMATSU」と指定したはずが、「YANAGII」「IMATSU」と、余分なIが入った2行になっています。さらに背景の装飾に入れた数字も「345,9.3」「0028 1136 - 906S」のような、読めそうで読めない文字列になりました。加えて、フォトリアルを指定したのに全体がイラスト調に寄っています。

これは珍しい失敗ではありません。画像・動画の生成AIは、文字を「文字」ではなく「そういう形の模様」として描くので、長い単語ほど崩れます。日本語ならなおさらです。

学び:文字は「量」ではなく「置き方」の問題

この失敗のあと、方針を次のように変えました。

AI動画に文字を入れるときのルール

実際、条件を絞ったうえでテストしたところ、日本語のコピーも正しく描けました。「相棒と、いつも一緒に。」という1行を、最後の2秒だけ、人物と重ならない位置に出す指定にしたところ、崩れずに出ています。

つまり「AIは文字が苦手だから使わない」ではなく、1箇所・短く・重ねない、という条件なら通るというのが実務的な結論です。ただし通ったかどうかは毎回目視で確認する必要があります(後述)。

プロンプトの構造:この5ブロックで書く

15秒の映像を狙って作るには、雰囲気を書いても足りません。実際に使っているプロンプトの骨組みをそのまま公開します。

■ 1. 全体の仕様(1〜2文)  尺/アスペクト比/実写かCGか/カメラの質感/「最初のフレームから動いていること」 ■ 2. 登場人物の固定(最重要)  人物:参照画像1の顔・肌の質感・髪型・体型を全カットで維持     服装の指定/表情の変化/「顔の極端なアップは使わない」  動物:参照画像2の毛色の模様・体格を全カットで維持 ■ 3. 秒割りの絵コンテ(1.5秒〜2秒ごと)  0.0-1.5s 何が起きるか+カメラの動き+光の当て方  1.5-3.5s …  (最後のブロックだけ、文字を出す指定を入れる) ■ 4. Overall Style  配色(今回は黒背景に鮮やかな黄色)/照明/カメラワークの原則  「画面に映るモニターには読める文字を一切出さない」 ■ 5. Avoid(禁止事項)  顔が変わる/別人に入れ替わる/手足が増える/崩れた文字/  透かし/イラスト調/実在ブランドのロゴ など

効くのは2番と5番です。とくに「Avoid」に書いた項目は、書かないと高確率で起こります。逆に言えば、1回失敗するたびにAvoidへ1行足していけば、生成の精度は上がっていきます。

没にした案もふくめ、書いたプロンプトは全文を制作ログのページに置いてあります。各版の生成結果のフレームと、なぜ没にしたのかもそこにまとめました。

実際の秒割り(採用版の冒頭部分)

0.0-1.5s  冒頭からすでに動いている。男性と犬が並んで撮影スタジオへ歩いて入ってくる。  カメラは横移動でトラッキング。背景に三脚のシネマカメラ、ソフトボックス、モニター。  暗い空間に鮮やかな黄色のアクセント照明が横切る。静止画から始めないこと。 1.5-3.5s  彼がシネマカメラを手に取り、真剣な表情で設定を確認する。  犬が近づいて脚を鼻先で押すと、真剣な表情が自然な笑顔に変わる。 3.5-6.0s  編集デスクでキーボードを叩く。犬が前脚をデスクにかけて腕にすり寄る。  カメラはデスク周りを低い位置から弧を描いて回り込む。  モニターには抽象的な色面と波形のみ。読める文字は一切表示しない。

ポイントは、各ブロックに「何が起きるか」「カメラがどう動くか」「光がどうなっているか」の3つを必ず書くことです。どれかが抜けると、その部分はAIが勝手に決めます。

納品前の検品:必ずフレームに割って見る

動画を再生して確認するだけでは、一瞬だけ崩れているフレームを見逃します。弊社は生成のたびに、必ず全フレームを静止画に書き出して目視しています。コマンドはこれだけです。

# 1秒ごとに静止画を書き出す(960px幅に縮小) ffmpeg -i video.mp4 -vf "fps=1,scale=960:-1" frames/frame_%03d.png # 文字が出るカットだけ細かく見たいときは fps を上げる ffmpeg -i video.mp4 -vf "fps=4,scale=960:-1" frames/frame_%03d.png

フレームを見るときのチェック項目

Webに載せるときの実装

作った動画をサイトのトップに置くとき、そのまま貼ると通信量と離脱の問題が出ます。このサイトでは次のようにしています。

特に3番目と4番目は忘れられがちです。トップに10MB以上の動画を無条件で配ると、モバイルの通信環境によっては表示が始まる前に離脱されます。

結局、何にどれくらいかかったか

項目実績
生成した本数トップ動画向けに9本(うち採用1本)
生成の費用2K・15秒で1本あたり約2ドル、合計20ドル弱
かかった日数2日(プロンプトの書き直しと検品を含む)
撮影費・スタジオ費0円
最終的な動画2560×1440/24fps/15秒/音声あり

正直に書くと、9本のうち5本は「思っていたのと違う」で捨てています。AI動画制作のコストは生成費用よりも、方向性を決めて、確認して、書き直す時間のほうが大きいというのが実感です。

よくある質問

本人の顔をAIに使わせて大丈夫なんですか?

自社の代表本人であり、本人の合意のうえで使っています。他人の顔や、権利者の許諾を得ていない写真を参照画像にするのは避けてください。社員の方に登場してもらう場合も、利用範囲と期間を決めて書面で合意を取ることをおすすめします。

商用利用はできますか?

ツールごとに利用規約とライセンス条件が異なり、プランによっても変わります。必ず使用するツールの最新の規約を確認してください。「生成できること」と「商用で使えること」は別の話です。

実写の撮影はもう不要になりますか?

ならないと考えています。実在する自社の設備、実際の商品、本物の社員が話す内容は、生成では代替できません。今回のように「雰囲気を伝える15秒」ならAIが向いていますし、採用動画や事例紹介のように事実を伝える映像は撮影が必要です。用途で分けるのが現実的です。

日本語のテロップは入れられますか?

短い1行を、1箇所だけ、人物と重ならない位置に出す指定なら通ることを確認しています。ただし毎回成功する保証はないので、確実性が必要な場合は動画編集ソフトで後から乗せてください。そのほうが早く、修正も効きます。

音声はどうしていますか?

MiniMax H3は映像と一緒に音声も出力できるため、今回はそのまま使っています。ただしサイト上では初期状態をミュートにし、ミュート解除ボタンで視聴者が選べるようにしています。

参考

※ツールの仕様・料金は2026年8月時点で確認したものです。変更される場合があるため、導入前に公式の最新情報をご確認ください。

「うちでも作れますか?」というご相談を歓迎します。AIで作るべきものと、撮影したほうがいいものの切り分けからお話しします。

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