複数チャンネルの週次リサーチを、集める時間ゼロにした設計
この記事の内容
弊社では、担当しているチャンネルと競合チャンネルの数字を、毎週自動で集めています。以前は担当者が手で見に行っていた作業です。
目的は「データを集めること」ではありません。企画会議の入口を、今週伸びた動画の一覧から始められる状態にすることです。
毎週、手で見に行くのをやめた
複数チャンネルを担当していると、それぞれの新着と競合の動きを追うだけで時間が溶けます。しかも、この作業は集中力を使う割に、判断を含みません。集める作業と、見て考える作業を分離するのが最初の設計方針でした。
仕組みは Google Apps Script で書いていて、週に1回、決まった曜日に自動で収集が走り、結果がGoogleスプレッドシートに書き込まれます。担当者は集まったものを見るところから始めます。
APIの使い方で、コストが100倍変わる
データ収集で最初に詰まるのが、利用枠の制限です。YouTube Data APIには操作ごとにコストが設定されていて、検索機能だけが極端に高いという特徴があります。一覧の取得が1に対して、検索は100。同じ情報にたどり着くのでも、経路を間違えると100倍払うことになります。
| やりたいこと | 素直な方法 | 実際に採用した方法 |
|---|---|---|
| 競合の新着を知る | キーワード検索で探す(高コスト) | 各チャンネルの投稿一覧を順に見る(低コスト) |
| 新しい競合を見つける | 毎回検索する | 登録キーワードのときだけ検索を使う |
やりたいことは同じでも、経路を変えるだけで無料枠に収まります。自動化は「できるか」より「毎週回し続けられるか」で設計するべきで、枠を使い切る作りにすると数週間で止まります。
「伸びた」を数字で定義する
再生数の絶対値で並べると、登録者の多いチャンネルが常に上位に来ます。それでは参考になりません。必要なのはそのチャンネルの平常運転と比べてどうかです。
そこで、複数の観点を組み合わせた点数で判定しています。
| 観点 | 見ているもの | 重み |
|---|---|---|
| そのチャンネル比 | 直近の中央値の3倍を超えたか | 最重要 |
| 登録者比 | 登録者数に対して十分に再生されたか | 高 |
| 初速 | 公開直後の1時間あたり再生数 | 中 |
| 反応率 | 再生に対する高評価・コメントの比率 | 低 |
合計点が基準を超えたものだけを「伸びた」として扱います。平均ではなく中央値を使うのがポイントで、一本だけ跳ねた動画があるチャンネルでも基準がぶれません。
AIの考察は、事実だけ書かせる
伸びた動画には、AIに考察を付けさせています。ここで制約を付けないと、それらしい一般論が並ぶだけになります。
- 出力形式を固定する:自由記述にせず、決まった項目に答えさせる
- 創作の余地を減らす設定にする:発想の広がりより再現性を優先する
- 「不明なものは不明と書く」と明示する:これを書かないと、AIは推測を事実として書きます
- 対象を絞る:伸びたものだけに限定し、一度に処理する件数にも上限を置く
特に3つ目が重要です。分からないことを分からないと書けるAIの出力は、そのまま企画会議で使えます。
ダッシュボードは「共有できるか」で作りが変わる
ここは作り直しになった部分です。当初、収集の仕組みと同じ環境の中に閲覧画面を作りました。動作はしましたが、複数のアカウントを使い分けている環境で開けないという問題が出ました。ログインしているアカウントによって表示できたりできなかったりする。
結局、表示部分だけを普通のWebサイトとして切り出し、収集の仕組みからデータだけを受け取る形に変えました。これでリンクを渡すだけで誰でも見られるようになりました。
社内ツールを作るとき、「自分が見られるか」ではなく「渡した相手が見られるか」で設計する。ここを後回しにすると、作り直しになります。
何が変わったか
集める時間がなくなり、見て考える時間だけが残りました。企画会議の入口が「今週何が伸びたか」から始まるようになったのが、いちばん大きい変化です。
付随して、判断の質も揃いました。担当者ごとに見ている範囲が違うと議論がかみ合いませんが、全員が同じ一覧を見ていれば、話は「なぜ伸びたのか」から始まります。
よくある質問
チャンネルが1つでも、作る意味はありますか?
1つだけなら手で見たほうが速い場面も多いです。効果が出るのは、競合を含めて追う対象が5つを超えたあたりからです。ただし1つでも、毎週同じ指標を同じ形で記録しておくと、後から傾向を見返せる資産になります。
分析ツールを契約するのとどちらがよいですか?
既製の分析ツールのほうが機能は豊富です。自作した理由は、複数チャンネルを横断して同じ基準で並べたかったことと、判定基準を自分たちで変えたかったことの2点です。基準をいじる必要がなければ、既製ツールで十分だと思います。
集めたデータは、どのくらい遡って使えますか?
蓄積するほど「平常運転」の精度が上がるので、少なくとも数ヶ月は貯めてから判断に使うことをおすすめします。始めた直後は比較対象が少なく、何を見ても伸びたように見えてしまいます。
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