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動画編集の自動化は、どこまでできて、どこからは人の仕事か

2026年9月13日公開 | 栁松聖吾

動画編集の自動化は、どこまでできて、どこからは人の仕事か

この記事の内容
  1. 工程を4つに割る
  2. 文字起こしは、手元で動かす
  3. テロップは「改行ルールを言葉にできるか」で決まる
  4. AIは、聞こえていない言葉を書く
  5. 効果音は、カタログを作ってから選ぶ
  6. 言い直しは、仕組みでは消せない
  7. 細かいが、止まるとつらい落とし穴
  8. よくある質問

弊社は動画制作の会社です。編集作業のうち、判断を必要としない部分を仕組みに寄せてきました。現在は、素材を渡すと無音カット・テロップ・効果音まで入った状態の編集データが出てくるところまで来ています。

この記事では、実際にどこまで自動化できていて、どこから先は人がやっているのかを、つまずいた点も含めて書きます。

工程を4つに割る

工程自動化人が残している判断
無音カットほぼ全自動しきい値の初期設定のみ
文字起こし全自動(ローカル処理)固有名詞の確認
テロップ整形ルールに沿って自動公開前の全文確認
効果音の配置候補まで自動採用可否と密度の調整
言い直しの除去していないすべて人が判断

編集者の仕事は「作る作業」から「確認して直す作業」に変わりました。ゼロからタイムラインを組むのではなく、ある程度組み上がった状態から始める形です。

文字起こしは、手元で動かす

文字起こしには外部のAPIを使わず、手元のパソコンで動く faster-whisper(large-v3)を使っています。カットは ffmpeg、仕組み自体の開発は Claude Code です。ローカルで動かす理由は精度ではなく、クライアントの未公開素材を社外に送らずに済むからです。

撮影したばかりの素材は、まだ世に出ていない情報の塊です。「AIに使わせない」という取り決めがあるクライアントも珍しくありません。ローカルで完結する構成にしておくと、この確認そのものが不要になります。

テロップは「改行ルールを言葉にできるか」で決まる

いちばん難しかったのはテロップです。技術ではなく、編集者が感覚でやっていた改行を、言葉にする作業が難所でした。

最終的に固めたルールの一部を挙げます。

【テロップ改行ルールの例】 ・1行あたりの目安幅を決める(半角は0.5文字換算) ・幅を多少超えても、語や句の途中では割らない方を優先する ・折り返してよいのは特定の助詞の後だけ。すべての助詞で折ると不自然になる ・行の先頭に来てはいけない語を列挙する(助詞・語尾・「こと」「という」などの形式名詞・「いただく」などの補助動詞) ・指示語や副詞は、次の語と結合して1行に収める ・表示は前後で隙間を作らず、次の行が始まるまで表示を延長する

「なんとなくこの辺で切る」を、この粒度まで落とすとAIは毎回同じ判断を再現します。逆に言えば、ここを言語化できない業務は自動化できません

AIは、聞こえていない言葉を書く

音声認識の結果には、実際には発話されていない語が混ざります。無音の区間に文字が現れる現象です。

最初は「無音区間と重なっていたら削除する」という単純な処理にしました。ところがこれが実際に話している語尾まで消してしまう。音声認識が返す時刻には数百ミリ秒のずれがあるため、無音との重なりだけでは判定できないのです。実測では、削除対象16語のうち、少なくとも3語が本来消すべきでない語でした。

対処として、削除候補になった区間の音量を実際に測り直し、音が鳴っていれば消さないという二重チェックを入れました。AIの出力をAI以外の方法で検算する、という考え方です。

効果音は、カタログを作ってから選ぶ

効果音の配置も自動化していますが、ここでも下ごしらえが本体でした。ファイル名の語感で選ぶと必ず外します。「どどん」という名前が、実際に聞くと想像より重い、ということが普通に起きます。

そこで、手持ちの効果音を全部解析して、長さ・最大音量・音の明るさを数値化したカタログを作りました。選ぶときはこの数値を見ます。

言い直しは、仕組みでは消せない

自動化できていないのが、話し手の言い淀みや二重取りです。音声に残っている以上、文字起こしも忠実に二重になります。

どちらを残すかは文脈の判断なので、ここは人がやります。「音として存在するものを消す」判断は、意味が分かる人にしかできません。この工程を無理に自動化しようとすると、必要な言葉まで消えます。

細かいが、止まるとつらい落とし穴

実務で足を取られたのは、編集ソフトへの受け渡し部分でした。日本語のファイル名の扱いです。

同じ「あ」に見える文字でも、内部的な表現が2通りあります。既存の素材と、処理の途中で新しく書き出したファイルで表現が食い違うと、編集ソフト上でリンク切れになります。ファイル名を実際のフォルダの中身と照合してから書き出す、という処理を入れて解消しました。

この手の問題は、自動化そのものより厄介です。動くけれど、たまに壊れる。原因が特定できるまでは、手作業のほうが速いという状態が続きます。

よくある質問

編集者の仕事は減りませんか?

単純作業の時間は減ります。ただし空いた時間は、構成の検討や見せ方の工夫に回っています。テロップを打ち込む速さで差がつかなくなる分、どこを残してどこを切るかという判断の質が、そのまま成果物の差になります。

導入にどのくらいの期間がかかりますか?

仕組みを作る時間より、いま何をやっているかを言葉にする時間のほうが長くかかります。1つの工程につき、手順と例外を書き出すのに数日、それを形にして実際に使いながら直すのに2週間程度が目安です。全工程を一度にやろうとすると、まず失敗します。

クライアントの素材をAIに通しても問題ありませんか?

契約上の取り決めによります。だからこそ弊社は、文字起こしを手元で完結する構成にしています。外部サービスに送る前提の仕組みを作ってしまうと、後から「この案件は不可」となったときに作り直しになります。

編集体制の効率化や、AIを使った制作フローの設計についてご相談いただけます。

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