くり返し発生するイベント告知の作成を、コピペ事故ごと仕組みで潰した話
この記事の内容
会員制サービスを運営されている企業様の告知業務をお手伝いしています。複数の拠点でオフラインの交流会を開催されていて、開催地ごとに参加者を集める告知を出す必要があります。
この業務は、一件ずつは単純です。ただし開催地の数だけ、まったく同じ形の作業がくり返される。しかも、開催のたびに発生します。こういう業務でいちばん怖いのは難易度ではなく、慣れによる見落としです。
1開催あたり、作るものは6点ある
外から見ると「告知を1本出す」だけに見えますが、実際に手を動かす側から見ると、1開催につき次の6点を作って、さらにそれらを互いにつなぐ必要があります。
| 作るもの | 役割 | 間違えたときに起きること |
|---|---|---|
| 告知メッセージ | 募集開始のお知らせ | 対象外の人に届く/届くべき人に届かない |
| イベントページ | 日時・会場・定員・申込 | 定員や締切が実態と食い違う |
| 予約完了時のメッセージ | 申込直後の自動返信 | 別開催地の会場を案内してしまう |
| 前日リマインド | 出席率を保つ | 送られない/前日以外に飛ぶ |
| 計測タグ | どの告知から申し込まれたか | 効果が分からなくなる |
| 参加者タグ | 次回以降の案内対象 | 案内対象がずれる |
厄介なのは6点を作ることではなく、6点を正しく配線することです。告知を押すとイベントページへ行き、申し込むと予約完了メッセージが飛び、同時にタグが付く。この線が1本でも外れていると、表面上は正常に見えるのに数字だけが合わなくなります。
手で作ると、毎回同じ場所で間違える
実際に発生する間違いは、ほぼ決まった型に収まります。人が悪いのではなく、複製して一部だけ書き換える作業の構造上、必ずそこに集まります。
- 日付と曜日が合っていない:「9月12日(木)」のように、日付だけ更新して曜日を直し忘れる
- リンク先が前回の開催地のまま:見た目のタイトルは新しい開催地なのに、押すと前回のページへ飛ぶ
- タグの日付だけ古い:集計時に前回分と混ざる
- 配信対象の絞り込み漏れ:地域を限定した案内が、全員に届いてしまう
いずれも、目視のダブルチェックでは止まりません。目で見て違和感がないから複製できてしまうのであって、違和感がないことこそが原因だからです。
やったこと1:文章の正解を1か所だけにする
まず、開催地ごとの文面をスプレッドシートに集約し、1開催地=1列という形に固定しました。日付・会場・定員・参加費・本文が、決まった行に必ず入っている状態です。
ここで重要なのは、作る側が文章を書かないと決めたことです。文章を書いてよい場所を1か所に絞ると、間違いが起きても「どこを直せば全部直るか」が明確になります。逆に、作りながら少しずつ文面を整えると、正解がどこにあるのか誰にも分からなくなります。
やったこと2:新規で作らず、複製して埋める
作成は、過去の開催分をひな形として複製し、日付・会場・定員だけを差し替える方式にしました。ゼロから作るより速いというだけでなく、前回うまくいった配線をそのまま引き継げるのが大きい部分です。
ここは全部を自動化していません。タグのようにまとめて作れるものは仕組みで作り、文面テンプレートのように開催ごとの差分が小さいものは複製で処理する。自動化の範囲は「速いかどうか」ではなく「事故ったときに気づけるか」で決めています。
やったこと3:出す前に、機械で突き合わせる
いちばん役に立ったのは、作る作業の自動化ではなく公開前チェックの自動化でした。作ったものを、元データと機械的に突き合わせます。
特に最後の配信対象数の桁は、事故ったときの被害がいちばん大きい項目です。地域限定の案内のつもりで全員に届く事故は、絞り込みを1つ外すだけで起きます。桁を見れば一発で分かるので、必ず目を通す位置に出すようにしました。
送信ボタンだけは、必ず人が押す
この業務では、実際に配信する操作を仕組み側からできないようにしています。テンプレートも予約枠も自動で用意しますが、最後に送る操作だけは人が画面で行います。
理由は単純で、配信は取り消せないからです。作り直せるものは自動化してよく、取り消せないものの手前には人を挟む。この線引きは、他の業務でも同じにしています。
同じ業務を抱えている場合、最初に作るべきもの
「くり返し発生する告知業務を効率化したい」というご相談をいただくと、多くの場合、最初に作りたくなるのは自動生成の仕組みです。ただ、実際に始めるなら順番は逆をおすすめします。
おすすめの順番
- チェックリストを作る:これまで起きた間違いを、種類ごとに全部書き出す
- それを機械で見られる形にする:目視で見ている項目のうち、突き合わせで判定できるものを分ける
- そのあとで生成を自動化する:チェックがある状態なら、多少雑に自動化しても事故になりません
チェックの仕組みがないまま生成だけ自動化すると、間違いの生産速度が上がるだけになります。
よくある質問
使っているツールを変えないと、同じことはできませんか?
ツールは問いません。この事例で本質的にやっているのは「文面の正解を1か所に置く」「複製で作る」「出す前に元データと突き合わせる」の3点だけです。配信ツールがAPIに対応していれば突き合わせを自動化できますし、対応していなくても、チェック項目を固定するだけで間違いはかなり減ります。
担当者が変わっても回りますか?
回すために必要なのは、手順書よりも「元データの置き場所」と「公開前チェックの項目」です。この2つが決まっていれば、作業自体は引き継げます。逆に、担当者の頭の中にだけ文面の判断基準がある状態だと、仕組みを入れても引き継げません。
どこまで自動化して、どこから人がやるべきですか?
取り消せる操作は自動化してよく、取り消せない操作の直前には人を置く、という基準で分けています。配信・決済・削除は取り消せないので、必ず人が最後のボタンを押す設計にしています。
「同じ作業を何度もくり返している」「担当者しか手順が分からない」という業務があれば、切り分け方からご相談ください。
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